「間違いなく皆さんです!」——青空の下、芝生の丘に立つ二人のスタッフが、両手をいっぱいに広げて感謝を伝える。長野県の日帰り温泉施設「ほっ湯あっぷる」のリール〈イベントのお礼〉は、計測時点で1,867回再生を記録した。施設アカウントの8本の中で再生は2位、いいねは99とシリーズ最多級。派手な数字ではない。けれど、この一本には“伸びた理由”がはっきりある。株式会社NARERUが運用する実データとともに、正直に解剖する。
日帰り温泉が、リールで「感謝」を伝えるという選択
ほっ湯あっぷるは、地域に根ざした日帰り温泉施設だ。SNS運用は株式会社NARERUが手がけている。フォロワー規模は大きくなく、一本あたりの再生も数百〜二千回ほど——いわゆるローカルアカウントだ。だからこそ、一本一本が「誰に・何を届けるか」で素直に数字が変わる。
〈イベントのお礼〉は、施設で開催したイベントに足を運んでくれたお客様への感謝を伝える回として企画された。商品の宣伝でも、割引の告知でもない。スタッフが自分の言葉と笑顔で「ありがとう」を伝える、利他的な内容だ。その一本が、施設の8本の中でいいね最多級の反応を集めた。
お悩みの方はお気軽にご相談ください
青空とスタッフの笑顔で、最初の一秒を掴む
冒頭に映るのは、よく晴れた青空の下、芝生の丘に立つ二人のスタッフ。両手をいっぱいに広げて、こちらへ向かって笑いかけている。画面の中央には黄色い文字で「間違いなく皆さんです!」。誰に感謝しているのか——その問いかけと答えが、最初の一カットに同居している。
この設計の狙いはシンプルだ。スタッフの飾らない笑顔と全身でのジェスチャーで、「あなたに向けて話しているよ」という空気を最初の一秒で作る。青空の明るさが施設の雰囲気を伝え、「皆さんです!」の一言が、見ている人を“その他大勢”ではなく“あなた”として迎え入れる。
「間違いなく皆さんです!」── 感謝の宛先は、見ているあなた。
感謝の動画は、宛先がぼんやりすると“身内のあいさつ”で終わってしまう。けれどこの回は「皆さんです!」と、見ている人へまっすぐ宛先を向けた。だから、画面の向こうの一人ひとりが「自分のことだ」と受け取れる。これが、いいね99という共感の数字につながった。
- 感謝の宛先を「皆さん=あなた」と明確にする。身内向けに閉じさせない
- 言葉だけでなく、笑顔・ジェスチャー・青空で“空気”を一秒で伝える
- 商品や告知を混ぜず、感謝そのものに振り切る。利他に徹する
数字を読む ― 1,867回再生の中身
ローカルアカウントの数字は、決して大きくない。だからこそ「どの指標が、シリーズの中で際立ったか」を正直に見ることが大事だ。〈イベントのお礼〉は、いいねという“共感”の指標で特に強かった。
注目すべきは、再生に対していいねの比率が高いことだ。1,867回で99いいねは、ローカルの感謝動画として十分に手応えがある。見た人が黙って通り過ぎず、「いいね」というかたちで気持ちを返してくれた——それが、この回のいちばんの収穫だ。
施設の中での立ち位置 ― 8本を並べて見る
同じ施設、同じ運用の8本を再生数で並べると、〈イベントのお礼〉がどのあたりにいるかが見えてくる。トップではないが、しっかり上位だ。
最多は〈秘密〉2,192回。〈イベントのお礼〉は1,867回でこれに次ぐ2位だ。多くの回が600〜1,000回で推移する中、上位に入っている。再生だけ見れば2位だが、いいね99はこの8本の中でも最多級——「届いた人の心がいちばん動いた回」と言っていい。
なぜ〈イベントのお礼〉は共感を集めたのか
理由は2つに整理できる。1つは利他に振り切ったことだ。多くの投稿は「見て・来て・買って」と、こちらの都合を伝える。けれどこの回は、お客様への「ありがとう」だけに徹した。見返りを求めない感謝は、受け取る側の心を素直に動かす。だから「面白いから」ではなく「気持ちが伝わったから」いいねが押された。いいね99がシリーズ最多級なのは、その表れだ。
もう1つは宛先の明確さだ。「間違いなく皆さんです!」という一言が、感謝の相手を“見ているあなた”へまっすぐ向けた。スタッフの笑顔と両手を広げたジェスチャーが、その言葉に体温を足す。誰に言っているのか分からない感謝は流されるが、「あなたへ」と宛てられた感謝は、立ち止まって受け取りたくなる。明るい青空のロケーションも、施設の良い空気をそのまま伝えていた。
残った課題 ― 共感を、来店と再訪につなげる
いいね99に対し、保存2・フォロー+5。気持ちは動いたが、「また見たい」「行きたい」という次の行動までは十分に引き出せていない。感謝の回でも、次の来店日や施設情報を一言添えるなど、好意を“行動”に変える導線を試す余地がある。
「人の温かさ」で反応が取れると分かった。次は、この温かさを来店・リピートという施設の目標へどう繋ぐか。スタッフの人柄が見える回を続けて“ファン”を育て、来館のきっかけに変えていくのが次の仕事だ。
この事例から学べること
- 利他に振り切る。宣伝でも告知でもない「ありがとう」だけの回が、いちばん素直に心を動かす
- 感謝の宛先を明確にする。「皆さん=あなた」と呼びかけ、見ている一人ひとりに受け取らせる
- 数字は再生より“気持ちの指標”で読む。ローカルでは、いいね・コメントの濃さが本当の手応えになる
〈イベントのお礼〉が示したのは、数字が小さいローカルアカウントでも、「人の温かさ」はちゃんと届くという事実だ。再生1,867回は派手ではない。けれど、いいね99という共感がそこに乗っていた。スタッフが笑顔で「ありがとう」を伝えた、ただそれだけの一本が、施設の8本の中でいちばん心を動かした。
株式会社NARERUは、成果も課題も隠さず数字で読み、勝ち筋を次の設計図に変えていく。大きな数字だけがSNSの成果ではない。届いた人の心がどれだけ動いたか——それを正直に見ることが、ローカルのSNS運用の本当の仕事だ。