秦アキラ
秦アキラ
株式会社NARERU 代表取締役

南信州・飯田市で生まれ育ち、地域の中小企業のAI活用・SNS運用・Web集客を支援。「地域の事業者を、テクノロジーでもっと自由に。」をミッションに、株式会社NARERUを経営しています。

毎日頑張る、自分へのご褒美」——休憩室で一杯を掲げる一人の男性と、その言葉。長野県の日帰り温泉施設「ほっ湯あっぷる」のリール〈自分へのご褒美〉は、計測時点で再生590回。じつは、ほっ湯あっぷるで作った8本のリールのうち、最も伸びなかった一本だ。隣の〈秘密〉は2,192回。同じ施設、同じ運用で、なぜ4倍近い差がついたのか。盛らず、正直に解剖する。失敗こそ、次の設計図になる。

3行でわかる、この回のまとめ
🎯
狙い|「毎日頑張る人へのご褒美」という共感の入口から、温泉の日常使いを促す回。働く人の癒やしに寄せた。
📊
結果|再生590回(ほっ湯あっぷる8本で最少)・保存2・いいね37・コメント0・フォロー+0。深い反応に届かなかった。
🔍
課題と次の一手|冒頭の「言葉」が抽象的で、止める力が弱かった。なぜ最少だったかを言語化し、次の8本に活かす。
秦アキラ
AUTHOR
秦 アキラ / 代表取締役・株式会社NARERU

BACKGROUND

8本のうち、最も伸びなかった一本

ほっ湯あっぷるは、長野県の日帰り温泉施設だ。SNS運用は株式会社NARERUが手がけ、施設の魅力を伝えるショートリールを継続的に投稿している。これまで作ったリールは8本。テーマは「家族で」「毎日の習慣に」「ここだけの秘密」など、温泉の使い方を少しずつ角度を変えて見せてきた。

〈自分へのご褒美〉は、その8本の一つだ。「毎日頑張る、自分へのご褒美」という言葉で、働く人の日常の癒やしに温泉を重ねる狙いだった。だが結果は再生590回。8本のなかで最少だった。最も伸びた〈秘密〉の2,192回と比べると、約4分の1。同じ施設・同じ運用で、ここまで差が出る。その理由を、正直に掘り下げる。


HOOK DESIGN

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冒頭に置いた「ご褒美」という言葉

サムネイルに映るのは、休憩室で一杯のグラスを掲げる男性のうしろに広がる和室と窓、首にかけた白いタオル。そこへ「毎日頑張る 自分へのご褒美」の文字と、「ほっ湯アップル」のロゴが重なる。働いたあとの自分をねぎらう——そんな世界観を、一枚で伝えようとした設計だ。

狙いは悪くなかった。「自分へのご褒美」は、誰の中にもある感情だ。だが結果として、この冒頭はスクロールの指を止める力が弱かった。理由は、言葉が抽象的すぎたこと。「ご褒美」だけでは、何が得られるのか・どんな気持ちよさがあるのかが一瞬で伝わらない。温泉ならではの「具体的な快感」が、最初のコマに無かった。

「毎日頑張る、自分へのご褒美」

休憩室で一杯日常のねぎらい
ご褒美共感ねらい・但し抽象的
白いタオル湯上がりの空気感

よく伸びた〈秘密〉や〈極上〉は、冒頭で「ここでしか味わえない」という具体性や好奇心を立てていた。対して〈ご褒美〉は、共感はあっても「続きを見たい」を引き出す引っかかりが弱い。フックは、共感だけでは足りない。「具体的に何が得られるか」までを最初の一瞬で見せる必要があった。

この回が教えてくれたフックの原則
  • 共感ワード(ご褒美・癒やし)は入口にはなるが、それだけでは指は止まらない
  • 冒頭には「具体的に何が得られるか」を一瞬で見せる要素を足す
  • 抽象的な言葉より、温泉ならではの“快感の証拠”をビジュアルで出す
ほっ湯あっぷる〈自分へのご褒美〉冒頭カット
冒頭カット。休憩室で一杯を掲げる男性と、「毎日頑張る 自分へのご褒美」の言葉。共感はあるが、止める力は弱かった。

DATA ANALYSIS

数字を読む ― 590回再生の中身

再生だけでなく、その再生が「どんな行動を生んだか」を見る。〈ご褒美〉は、深い反応の指標がほとんど立たなかった。盛らずに、そのまま並べる。

590回
再生数(ほっ湯あっぷる8本で最少)
最多の〈秘密〉2,192回の約4分の1。8本のなかで唯一、1,000回に届かなかった。最初の配信から先に広がらなかった回だ。
+0人
この動画経由の新規フォロー
フォロー獲得はゼロ。「見て終わり」で止まり、「この施設をもっと見たい」までは動かせなかった。ここが一番の課題。
2件
保存数
保存はわずか2件。「行きたいから残しておこう」という来店意欲の芽が、ほとんど立たなかった。
37 / 0
いいね / コメント
いいね37・コメント0。共感の入口としていいねは付いたが、語りたくなる・反応したくなる強さには届かなかった。

注目すべきは、再生が伸びなかったこと以上に、保存・フォロー・コメントという「深い反応」がほぼゼロだった点だ。これはアルゴリズムにとって「広げる価値が弱い」というシグナルになり、配信がそこで止まる。再生590回という数字は、その結果だと読める。


COMPARISON

ほっ湯あっぷる8本を並べて見る

同じ施設、同じ運用、同じ8本シリーズの中で、〈ご褒美〉だけがなぜ最少だったのか。再生数を並べると、その位置が一目で分かる。

再生数の比較(ほっ湯あっぷる・リール8本/計測 6/24時点)
秘密 2,192
イベント 1,867
極上 1,541
帰省 1,083
毎日 958
従業員 901
家族 811
ご褒美 590

8本の幅は590〜2,192回。最少の〈ご褒美〉と最多の〈秘密〉で約3.7倍の差がある。同じアカウント・同じ施設でも、冒頭の見せ方とテーマの当たり外れだけで、これだけ伸びが変わる。〈ご褒美〉は、その“外した側”の貴重なデータだ。


WHY

なぜ〈ご褒美〉が最少だったのか

理由は2つに整理できる。1つは冒頭の言葉が抽象的だったことだ。「自分へのご褒美」は共感はされるが、温泉ならではの“具体的な気持ちよさ”が一瞬で伝わらない。よく伸びた〈秘密〉や〈極上〉が「ここでしか味わえない」という具体性や好奇心で指を止めたのに対し、〈ご褒美〉は「いい言葉だね」で流されてしまった。スクロールを止める引っかかりが弱かった。

もう1つは深い反応が生まれず、アルゴリズムが配信を止めたことだ。Instagramのリールは、保存・フォロー・コメントといった「価値のシグナル」が強いほど新しい人へ配信を広げる。〈ご褒美〉は保存2・フォロー+0・コメント0と、ほぼシグナルが立たなかった。最初に届いた人の反応が薄かったため、アルゴリズムは「これ以上広げる価値は低い」と判断し、590回で配信が止まった。フックの弱さが浅い反応を生み、浅い反応が配信を止める——この連鎖が、最少という結果を作った。


ISSUES

残った課題 ― この失敗を次の設計に変える

冒頭を「共感」から「具体」へ。
「ご褒美」のような共感ワードは入口にはなるが、それだけでは指は止まらない。次は冒頭の一瞬で「湯けむり・かけ流し・湯上がりの一杯」など、温泉ならではの具体的な快感をビジュアルで見せる。よく伸びた〈秘密〉の見せ方を、この回の反省と合わせて標準化する。
失敗を1本で終わらせず、データとして残すこと。
590回・フォロー+0は、ほっ湯あっぷる8本で最少という“外した実例”だ。だからこそ価値がある。この回と〈秘密〉〈極上〉の差分を言語化し、次の8本の冒頭設計に反映する。失敗の理由を言葉にできれば、それは次の伸びに変わる。

TAKEAWAY

この事例から学べること

伸びなかった一本が教えてくれた3原則
  • 共感だけでは指は止まらない。「ご褒美」のような言葉に、具体的に何が得られるかを足す
  • 冒頭の具体性が、伸びの分かれ目。温泉なら“快感の証拠”を最初の一瞬で見せる
  • 伸びなかった回こそ宝。外した理由を言語化すれば、次の設計図になる

〈ご褒美〉が示したのは、SNSは「いい言葉」だけでは伸びないという事実だ。ほっ湯あっぷる8本のなかで、再生590回・フォロー+0は最少だった。その差を生んだのは、テーマの善し悪しではなく、冒頭の“具体性”だった。同じ施設でも、見せ方ひとつで約3.7倍の差がつく。

株式会社NARERUは、伸びた回も伸びなかった回も、隠さず数字で読む。最少だった一本を、次の8本の伸びに変える。失敗を正直に解剖することこそが、SNS運用の本当の仕事だ。ほっ湯あっぷるの発信は、まだ続く。