再生959回、保存0、フォロー増0。長野県飯田市の車販売店「KOWA飯田店」のリール〈未使用車って中古じゃない!〉は、正直に言えば、伸びなかった一本です。それでも私たちはこの数字を隠しません。スキップ率54%・完走率2%というデータの中に、「なぜ届かなかったのか」の答えがはっきり刻まれていたからです。株式会社NARERUが、失敗の中身まで実データで解剖します。
「未使用車ってなに?」に答える、認知拡大の一本
KOWA飯田店は、長野県飯田市の車販売店です。SNS運用は株式会社NARERUが手がけており、この回は2026年6月24日に投稿したリール〈未使用車って中古じゃない!〉。「未使用車=中古車」という誤解を解き、店の認知を広げることを狙った解説型の企画でした。
未使用車とは、登録だけして誰も乗っていない、いわば「ほぼ新車」の車のこと。動画では定義から、新車・未使用車・中古車の違い、価格や納期のメリット、そして「色やグレードは在庫から選ぶため早い者勝ち」というデメリットまで、正直に伝える構成にしました。内容の設計そのものは、私たちの正直マーケの考え方に沿ったものです。それでも数字は伸びませんでした。その理由を、逃げずに見ていきます。
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メーター接写+「あるある」宣言で始まる冒頭
冒頭は、未使用車のメーター類の接写から始まります。エンジンをかけ、走行距離がほぼ0kmであることを見せてから、カメラが一気にスタッフの渡辺さんに寄る——静止画ではなく「動き」と「証拠」でスクロールを止める設計です。
そこに重ねた第一声が、「"未使用車=中古車"だと思ってる人、ちょっと損してるかもしれません」。飯田で車を探している人なら誰もが一度は抱く誤解を、最初の一言で名指しする「あるある」宣言です。テロップは「未使用車って、なに?」。フック自体は、視聴データを見る限り一定の手応えがありました。
「"未使用車=中古車"だと思ってる人、ちょっと損してるかもしれません」
スキップ率は54%。裏を返せば、約半数がこの冒頭を通過して先を見に進んだということです。「動きのあるフック+誤解の名指し」という設計は機能した可能性が高い——担当の中村もそう分析しています。問題は、そこから先にありました。
数字を読む ― 再生959回の中身
2026年7月2日計測の実数です。再生数そのものより注目すべきは、視聴後の行動、つまり「深い反応」がほぼゼロだったことです。
スキップ率54%は、冒頭が約半数を引き留めたことを示します。しかし完走率はわずか2%。冒頭を通過した人の大半も、最後までは残らなかった。保存・コメント・フォローという「アルゴリズムに好かれる深い反応」が全て0または僅少だったことで、配信が新しい人へ広がる循環は起きませんでした。
959回はどこで消えたか ― 視聴の流れを並べる
再生開始から完走までの人数を、計測データ(スキップ率54%・完走率2%)から概算して並べると、この動画の構造的な問題が一目でわかります。
スキップ率54%=冒頭で約半数が離脱、残り約441回が本編へ。しかし完走率2%=最後まで見たのは概算で約19回。保存を促す一言は動画のいちばん最後に置かれていたため、その呼びかけを聞いた人はごく僅かでした。保存0は「保存したくない内容だった」のではなく、「保存の誘導がほぼ誰にも届いていなかった」——数字はそう語っています。
なぜ届かなかったのか ― 敗因は「順番」にあった
最大の敗因は、保存誘導のタイミングです。台本では「"未使用車いいかも"と思ったら保存して、車探してる人に送ってあげてください」という呼びかけを、動画の最終カットに置いていました。しかし完走率は2%。つまり、保存という行動を促すメッセージ自体が、視聴者のほぼ全員が離脱した後に流れていたのです。どれだけ丁寧に誘導しても、聞こえていなければ0のまま。保存0件という結果は、この構造の必然でした。担当の中村自身も「保存誘導が強引で、かつ後半すぎた。保存のメリットはなるべく早く伝えるべき」と振り返っています。
もう1つは、中盤の維持力です。冒頭のフック——メーター接写の動きと「未使用車=中古車だと思ってる人」というあるある宣言——は約半数を引き留めており、設計として機能した可能性が高い。しかし冒頭を通過した約441回のうち、最後まで残ったのは約19回。定義→比較→メリット→デメリットと進む解説構成が、途中で「もう分かった」と思わせてしまった可能性があります。冒頭で立てた問いの答えが早めに出てしまう構成は、後半を見る理由を失わせます。フックの勝ちを、本編が受け止めきれなかった一本でした。
残った課題 ― 次のKOWA回への修正点
「あとで車を探すとき用に保存」という保存のメリットは、視聴者がまだ残っている前半のうちに伝える。完走率2%の動画で最後に呼びかけても、届く相手はいません。誘導の言葉も「送ってあげて」型の押しつけにならない自然な形に磨き直します。
スキップ率54%はフックの手応えを示す一方、完走率2%は中盤の失速を示します。答えを小出しにする、後半に「いちばん知りたい情報」を残すなど、最後まで見る理由を構成に組み込むことが次の課題です。
この事例から学べること
- 行動喚起は「届く場所」に置く。保存・フォローの呼びかけは、視聴者が残っている前半〜中盤に。最後の呼びかけは完走者にしか届かない
- フックと完走は別の勝負。冒頭で半数を掴んでも、中盤に「見続ける理由」がなければ完走率は上がらない
- 敗因は数字で特定できる。スキップ率と完走率を分けて読めば、「どこで・なぜ」離脱したかは推定できる。感覚ではなくデータで直す
再生959回・保存0。この数字だけを見れば、公開したくない一本かもしれません。しかし「保存誘導が遅すぎた」という敗因が数字ではっきり特定できたことは、次のKOWA飯田店の動画への確かな設計図になります。伸びた回だけを見せるのは簡単です。私たちは、伸びなかった理由まで正直に共有する。それが株式会社NARERUの、SNS運用との向き合い方です。