秦アキラ
秦アキラ
株式会社NARERU 代表取締役

南信州・飯田市で生まれ育ち、地域の中小企業のAI活用・SNS運用・Web集客を支援。「地域の事業者を、テクノロジーでもっと自由に。」をミッションに、株式会社NARERUを経営しています。

再生数2万回と、予約12件。もしどちらか一方しか選べないとしたら、あなたの施設にとって価値があるのはどちらだろうか。長野県松川町のキャンプ場〈梅松苑〉のSNS運用で、私たちはこの2つの数字を同じ月に両方手にした。だからこそ、断言できることがある。この2つは、まったく別の数字だ。

BACKGROUND

再生数は嬉しい。でも、再生数は夕食にならない

SNS運用代行のレポートは、多くの場合「今月は◯万回再生されました」で締められる。数字が大きいほど、良い仕事をした気になれる。受け取る側も、なんとなく安心する。

でも施設の経営者が月末に見るのは、再生数ではなく予約台帳と売上だ。「2万回見られた」ことと「12組が泊まりに来た」ことの間には、深い谷がある。この谷を渡る設計をしないまま投稿を続けるのが、観光施設のSNS運用でいちばん多い失敗だと私たちは考えている。

誤解のないように書いておくと、再生数が無意味だと言いたいのではない。再生数は「認知の入口の広さ」を測る大事な数字だ。問題は、認知の数字を成果の数字として報告し、それ以外を測っていない運用があまりに多いこと。認知と成果は役割が違う。違うものは、分けて測る必要がある。

認知の数字
22,918回
梅松苑のコテージ紹介リールの再生数(2026年7月29日時点)。施設を知ってもらう入口としては最高の数字。ただし、これ自体は1円の売上でもない。
売上の数字
12件
予約サイトへの遷移から実際の予約につながった件数(2026年7月27日・施設の予約台帳と照合済み)。こちらは、そのまま売上になる。
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「見た人」が「泊まる人」になるまでの階段

梅松苑では、投稿から予約までを4段の階段として設計し、各段を自社開発の計測ツールで記録している。2026年7月の実測値はこうだ。

42,476回
① リールが見られる(制作6本の累計再生・7/29時点)
入口。ここが大きいほど下の段に人が流れる可能性が増える。
19件/日
② プロフィールのリンクからLPへ(投稿翌日の実測)
投稿の翌日、LPアクセスは平常時(1日約3件)の約6倍に。すべてInstagram経由だった。
48件
③ LPから予約ページへ進む(7/1〜7/29・人数ベース)
「行きたいかも」が「空きを見てみよう」に変わった人の数。同一の方の複数クリックは1件に集約している。
12件
④ 実際に予約する(7/27照合・当時の遷移36件中)
予約ページまで来た人の3人に1人(33%)が予約した。ここが売上。

重要なのは、各段のあいだで人は必ず減るということ。4万回見られても、LPへの導線が無ければ②は起きない。LPが分かりにくければ③で消える。つまり「どの段で人が減ったか」を特定できれば、次の打ち手は自動的に決まる。逆に、計測していなければ「もっとバズる動画を作ろう」しか打ち手がなくなる。ここが分かれ道だ。

FIX BY STAGE

段ごとの「詰まり」には、それぞれ別の薬がある

ファネルの美しさは、詰まった段によって打ち手が明確に変わることだ。梅松苑の運用で実際に使っている判断基準を、段ごとに公開する。

🎬 ①再生数が伸びない場合——直すのは冒頭3秒。フックの言葉と最初の映像を差し替える。梅松苑では「予約はお早めに」と煽った回(1,531回)と「仲間と過ごす楽しさ」を見せた回(当時18,799回)で12倍の差が出た。悪いのはたいてい動画全体ではなく、入口の3秒。
🔗 ②プロフィール遷移が起きない場合——直すのはCTAとプロフィール。動画の最後で「詳しくはプロフィールのリンクから」と行き先を言葉で示す。プロフィール文の1行目に「何ができる場所か」を書く。リンクの直前に置く一文で、踏む理由を作る。
📄 ③LPから予約ページへ進まない場合——直すのはLPの情報順序。動画で期待した世界観(写真)を最初に、料金と設備を中盤に、予約ボタンを迷わない位置に。動画とLPの空気が違うと、人はここで静かに帰る。
🛒 ④予約ページで止まる場合——直すのは期待値のズレ。ここまで来た人が予約しない主因は、料金や空き状況が動画の期待と違うこと。梅松苑の予約率33%は、動画の段階で「ひとり3,000円」「手ぶらOK」を正直に伝えていたことが効いている。
MISREADING

再生数「だけ」を追うと、何を間違えるのか

🙅 間違い①:バズった投稿の真似を繰り返す。梅松苑で最も再生されたのはコテージ回(22,918回)だが、7月の予約ページ遷移の急増を作ったのは、再生3,313回の「お盆キャンプ」回だった。再生数の順位と、予約への貢献の順位は一致しない。バズの再現を追いかけているうちに、予約を生む型を見逃す。
🙅 間違い②:フォロワー数を成果指標にする。フォロワーは資産だが、宿泊予約は「フォロワーになる前の人」からも入る。実際、投稿翌日にLPへ来た19人は、動画を見てその場でリンクを踏んだ人たちだ。フォロワーが増える前に、予約は起きる。逆に言えば、フォロワーが少ないことは「予約が取れない理由」にならない。
🙅 間違い③:「再生されたのに予約が来ない」を動画のせいにする。多くの場合、悪いのは動画ではなく導線だ。プロフィールにリンクがない、LPが重い、予約ボタンが見つからない——動画の外側で人は消えている。動画を作り直す前に、廊下の照明を点けたほうがいい。
MINDSET

「SNSは費用」から「SNSは投資」へ

計測と照合が回り始めると、施設側の意思決定が変わる。「SNSにいくら払うか」という費用の話が、「予約1件あたりいくらで獲得できているか」という投資の話になるからだ。

たとえば月の運用費を予約12件で割れば、1件あたりの獲得コストが出る。それを宿泊単価と比べれば、続けるべきか、増やすべきか、経営の言葉で判断できる。数字が揃うと、SNSは「若い人がやってるらしいもの」から「投資対効果を語れる集客チャネル」に変わる。この変化こそが、計測の一番の価値だと思っている。

そしてもうひとつ。数字が揃うと、失敗も報告できるようになる。「今月は遷移が減りました。原因はおそらく◯◯なので、来月はこう変えます」——この会話ができる関係は、再生数の報告だけでは絶対に生まれない。

TAKEAWAY

明日から見るべき数字は、この3つ

観光・宿泊施設のSNSで追うべき数字
  • 保存数とプロフィール遷移。「あとで行きたい」のシグナル。再生数より予約に近い
  • LP・予約ページへの流入数。投稿の翌日に何人が動いたか。ここが計測できると投稿の「本当の成績」が出る
  • 実予約との照合。月に一度、予約データと突き合わせる。「SNS経由で◯件」が言えるようになると、SNSは費用ではなく投資になる

梅松苑の実測データの詳細は「投稿の翌日、キャンプ場のLPに何が起きたか」で、取り組み全体は実績ページで公開している。「うちは今、どの段で人が減っているのか」が気になった方は、LINEの無料相談へ。現状の投稿と導線を拝見して、見るべき数字からご提案します。