秦アキラ
秦アキラ
株式会社NARERU 代表取締役

南信州・飯田市で生まれ育ち、地域の中小企業のAI活用・SNS運用・Web集客を支援。「地域の事業者を、テクノロジーでもっと自由に。」をミッションに、株式会社NARERUを経営しています。

のスライドドアを勢いよく開けて、渡辺さんが話し出す——。長野県飯田市の車販売店「KOWA飯田店」のリール「南信州の車あるある、いくつ共感できる?」は、計測時点で再生748回。正直に言えば、伸びませんでした。それでも、この一本を解剖します。スキップ率42.4%、45秒地点の視聴率11%。数字を分解すると、「入口では勝ち、中身で負けた」構造と、次に必ず活きる発見が見えてきたからです。株式会社NARERUが、実データで包み隠さずお見せします。

3行でわかる、この回のまとめ
🎯
狙い|飯田市の人に刺さる「地域あるある」で、既存フォロワーのエンゲージメントを高めつつ、飯田市内の新規フォロワーを獲得する。
📊
結果|再生748回・保存1・いいね15・コメント0・フォロー+1。スキップ率42.4%、完走率4%(投稿6/26・計測7/2)。
🔍
敗因と発見|敗因はネタ選定。「駐車場ネタ」が当たり前すぎて共感にならなかった。一方で45秒地点に11%が残った——「次は何が来る?」の期待は視聴維持に効く。これが次の設計図になる。
秦アキラ
AUTHOR
秦 アキラ / 代表取締役・株式会社NARERU

BACKGROUND

地域密着の車販売店が、「あるある」で地元を狙った回

KOWA飯田店は、長野県飯田市の軽未使用車専門店。SNS運用は株式会社NARERUが手がけています。商圏が飯田・下伊那に限られる地域ビジネスにとって、大切なのは全国的なバズではなく、飯田市内のフォロワー=見込み客です。この回の狙いも明確でした。地域の人にしか分からない「車あるある」で共感を取り、既存フォロワーのエンゲージメントと、市内の新規フォローを同時に獲りにいく。

台本は、飯田の車あるあるをテンポよく列挙していく構成でした。「家族の人数=車の台数」「“ちょっとそこまで”でも当然、車」「店選びの第一条件は味より駐車場」——地元の人なら頷くはずのネタを40〜50秒で連発し、最後に「車屋巡りで疲れなくていい」というKOWAの強みに着地させる設計です。共感優先で宣伝色を消し、着地の一瞬だけ店につなぐ。設計思想そのものは、あるある系の王道でした。


HOOK DESIGN

お悩みの方はお気軽にご相談ください

LINEで相談 チャットで気軽に聞きたい方
フォームで問い合わせ じっくり相談・見積りしたい方

スライドドアの「動き」と、当事者を名指しする宣言

冒頭3秒のフックは、車のスライドドアを勢いよく開けて話し出す渡辺さん。静止した語りではなく「動き」でスクロールの指を止め、そのまま「飯田で車乗ってる人にしか分からない“あるある”」という宣言で、見るべき人を名指しする——台本ではさらに「5個以上わかったら、あなたは生粋の飯田人」と、視聴者をクイズの当事者に引き込む仕掛けを重ねていました。

スライドドアが勢いよく開く。「飯田で車乗ってる人にしか分からない“あるある”、いきます」

スライドドアの動き動きで指を止める
飯田の人限定当事者の名指し
いくつ共感できる?クイズ化で参加させる

結論から言うと、このフック自体は機能していました。スキップ率は42.4%——同じ週に分析した6本のリールの中で2番目に低い数字です。入口で人は止まっていた。問題は、その先にありました。

KOWA飯田店「南信州の車あるある」リールのサムネイル
実際のリールのカット。スライドドアを開けて話し出す渡辺さんの「動き」がフック。

DATA ANALYSIS

数字を読む ― 748回再生の中身

再生748回という結果だけ見れば「失敗」の一言で終わります。しかし視聴データを分解すると、勝っていた部分と負けていた部分が、はっきり分かれていました。

748回
再生数(投稿6/26・計測7/2)
狙った拡散には届かず。同じ週にNARERUが運用した他クライアントのリールでは16,675回まで伸びた例もあり、差は歴然だった。
42.4%
スキップ率(低いほど良い)
冒頭で離脱した人の割合。同週に分析した6本の中で2番目に低く、スライドドアの動きと「飯田の人限定」の宣言は入口として機能していた。
11%
45秒地点の視聴率(完走率4%)
この回最大の発見。45秒地点まで11%が残った。「次は何が来るんだろう」という列挙型の期待は、視聴維持に確かに効く。
1 / +1
保存 / フォロー増
いいね15・コメント0。共感の連鎖(保存・コメント・フォロー)を狙った企画で、深い反応がほぼゼロ。ネタが「共感」ではなく「当たり前」の側に落ちた証拠だ。

つまりこうです。入口(フック)では勝ち、中身(ネタ)で負けた。視聴データでは「駐車場ネタ」のところで1段階目の離脱が起きていました。地元の人にとって駐車場の話は、あるあるではなく「ただの日常」。言われて「たしかに!」と気づく驚きがなければ、共感は保存にもコメントにも変わりません。


COMPARISON

同じ週の6本と並べる ― 入口では2番目に強かった

同じ計測週(7/2計測)にNARERUが分析したリール6本のスキップ率を並べます。スキップ率は「冒頭で指を止められたか」の指標。低いほど良い数字です。

スキップ率の比較(同週計測6本・低いほど良い)
しかく屋 34.9%
本作(KOWA) 42.4%
HANDZ 49%
KOWA別企画 54%
PRO-motion A 58.2%
PRO-motion B 61.7%

本作のスキップ率42.4%は6本中2番目の良さ。ところが再生数では、しかく屋の16,675回に対し本作は748回。入口の勝負では上位だったのに、結果は最下位圏——「フックが良ければ伸びる」わけではないことを、この対比がはっきり示している。伸びの決定打は、フックの先にある「中身の強度」だった。


WHY

なぜ伸びなかったのか ― そして何を発見したのか

敗因はネタ選定です。視聴データでは「駐車場ネタ」の地点で1段階目の離脱が起きていました。飯田の人にとって「店選びは駐車場が大事」は、言われて膝を打つ発見ではなく、あまりに当たり前の日常。あるあるコンテンツの生命線は「言語化されて初めて気づく共感」であって、「誰もが知っている事実」ではありません。当たり前すぎるネタは、共感どころか離脱の引き金になる——748回という数字は、その線引きの厳しさを教えてくれました。

もう一つは尺とテンポです。40〜50秒でネタを列挙する構成は、弱いネタが混ざった瞬間に失速します。もっと強いあるあるだけに絞ってテンポを上げ、30秒程度に圧縮してCTA(行動喚起)へ早く送るべきでした。ダレる前に着地する。列挙型の鉄則です。

ただし、この回には収穫もありました。完走率4%という数字の内側で、45秒地点に11%の視聴者が残っていたのです。これは悪くない数字です。「次は何が来るんだろう」と期待させる列挙構成そのものは、視聴維持の武器として確かに機能する。負けたのはフォーマットではなく、そこに載せたネタの強度だった——この切り分けができたことが、748回の最大の価値です。


ISSUES

残った課題 ― 次の一本への設計変更

ネタの強度を、投稿前に検証すること。
「地元の人が言われて初めて気づくか?」を基準に、あるあるネタを事前にふるいにかける。当たり前の事実は捨て、強いネタから順に前へ置く。ネタ選定の失敗は、フックや編集では取り返せない。
尺を30秒程度に圧縮し、CTAへ早く送ること。
弱いネタを削ってテンポを上げれば、45秒地点まで11%を残せた「期待の力」はもっと活きる。ダレる前にCTAへ——深い反応(保存・コメント・フォロー)を取りにいく設計に組み替える。

TAKEAWAY

この事例から学べること

“あるある系”で失敗しない3原則
  • あるあるは「当たり前」と紙一重。言われて初めて気づくラインを狙う。誰もが知っている事実は共感ではなく離脱を生む
  • 列挙型は「次は何が来る?」の期待が武器。ただし弱いネタが1つ混ざると連鎖が切れる。強いネタだけで構成する
  • 迷ったら短く。30秒程度に圧縮し、ダレる前にCTAへ送る。深い反応(保存・コメント・フォロー)こそが次の配信を連れてくる

748回という数字を、私たちは隠しません。伸びた回だけを並べて見せるのは簡単です。しかし、クライアントの成果を本気で積み上げるなら、伸びなかった一本にこそ次の設計図があります。入口で勝てていたこと、45秒地点に11%が残っていたこと、駐車場ネタで離脱が起きたこと——この解像度で敗因を特定できれば、次の一本は必ず強くなります。

株式会社NARERUは、成果も課題も数字で正直に読み、次の勝ち筋に変えていきます。KOWA飯田店の発信は、まだ続きます。