車のスライドドアを勢いよく開けて、渡辺さんが話し出す——。長野県飯田市の車販売店「KOWA飯田店」のリール「南信州の車あるある、いくつ共感できる?」は、計測時点で再生748回。正直に言えば、伸びませんでした。それでも、この一本を解剖します。スキップ率42.4%、45秒地点の視聴率11%。数字を分解すると、「入口では勝ち、中身で負けた」構造と、次に必ず活きる発見が見えてきたからです。株式会社NARERUが、実データで包み隠さずお見せします。
地域密着の車販売店が、「あるある」で地元を狙った回
KOWA飯田店は、長野県飯田市の軽未使用車専門店。SNS運用は株式会社NARERUが手がけています。商圏が飯田・下伊那に限られる地域ビジネスにとって、大切なのは全国的なバズではなく、飯田市内のフォロワー=見込み客です。この回の狙いも明確でした。地域の人にしか分からない「車あるある」で共感を取り、既存フォロワーのエンゲージメントと、市内の新規フォローを同時に獲りにいく。
台本は、飯田の車あるあるをテンポよく列挙していく構成でした。「家族の人数=車の台数」「“ちょっとそこまで”でも当然、車」「店選びの第一条件は味より駐車場」——地元の人なら頷くはずのネタを40〜50秒で連発し、最後に「車屋巡りで疲れなくていい」というKOWAの強みに着地させる設計です。共感優先で宣伝色を消し、着地の一瞬だけ店につなぐ。設計思想そのものは、あるある系の王道でした。
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スライドドアの「動き」と、当事者を名指しする宣言
冒頭3秒のフックは、車のスライドドアを勢いよく開けて話し出す渡辺さん。静止した語りではなく「動き」でスクロールの指を止め、そのまま「飯田で車乗ってる人にしか分からない“あるある”」という宣言で、見るべき人を名指しする——台本ではさらに「5個以上わかったら、あなたは生粋の飯田人」と、視聴者をクイズの当事者に引き込む仕掛けを重ねていました。
スライドドアが勢いよく開く。「飯田で車乗ってる人にしか分からない“あるある”、いきます」
結論から言うと、このフック自体は機能していました。スキップ率は42.4%——同じ週に分析した6本のリールの中で2番目に低い数字です。入口で人は止まっていた。問題は、その先にありました。
数字を読む ― 748回再生の中身
再生748回という結果だけ見れば「失敗」の一言で終わります。しかし視聴データを分解すると、勝っていた部分と負けていた部分が、はっきり分かれていました。
つまりこうです。入口(フック)では勝ち、中身(ネタ)で負けた。視聴データでは「駐車場ネタ」のところで1段階目の離脱が起きていました。地元の人にとって駐車場の話は、あるあるではなく「ただの日常」。言われて「たしかに!」と気づく驚きがなければ、共感は保存にもコメントにも変わりません。
同じ週の6本と並べる ― 入口では2番目に強かった
同じ計測週(7/2計測)にNARERUが分析したリール6本のスキップ率を並べます。スキップ率は「冒頭で指を止められたか」の指標。低いほど良い数字です。
本作のスキップ率42.4%は6本中2番目の良さ。ところが再生数では、しかく屋の16,675回に対し本作は748回。入口の勝負では上位だったのに、結果は最下位圏——「フックが良ければ伸びる」わけではないことを、この対比がはっきり示している。伸びの決定打は、フックの先にある「中身の強度」だった。
なぜ伸びなかったのか ― そして何を発見したのか
敗因はネタ選定です。視聴データでは「駐車場ネタ」の地点で1段階目の離脱が起きていました。飯田の人にとって「店選びは駐車場が大事」は、言われて膝を打つ発見ではなく、あまりに当たり前の日常。あるあるコンテンツの生命線は「言語化されて初めて気づく共感」であって、「誰もが知っている事実」ではありません。当たり前すぎるネタは、共感どころか離脱の引き金になる——748回という数字は、その線引きの厳しさを教えてくれました。
もう一つは尺とテンポです。40〜50秒でネタを列挙する構成は、弱いネタが混ざった瞬間に失速します。もっと強いあるあるだけに絞ってテンポを上げ、30秒程度に圧縮してCTA(行動喚起)へ早く送るべきでした。ダレる前に着地する。列挙型の鉄則です。
ただし、この回には収穫もありました。完走率4%という数字の内側で、45秒地点に11%の視聴者が残っていたのです。これは悪くない数字です。「次は何が来るんだろう」と期待させる列挙構成そのものは、視聴維持の武器として確かに機能する。負けたのはフォーマットではなく、そこに載せたネタの強度だった——この切り分けができたことが、748回の最大の価値です。
残った課題 ― 次の一本への設計変更
「地元の人が言われて初めて気づくか?」を基準に、あるあるネタを事前にふるいにかける。当たり前の事実は捨て、強いネタから順に前へ置く。ネタ選定の失敗は、フックや編集では取り返せない。
弱いネタを削ってテンポを上げれば、45秒地点まで11%を残せた「期待の力」はもっと活きる。ダレる前にCTAへ——深い反応(保存・コメント・フォロー)を取りにいく設計に組み替える。
この事例から学べること
- あるあるは「当たり前」と紙一重。言われて初めて気づくラインを狙う。誰もが知っている事実は共感ではなく離脱を生む
- 列挙型は「次は何が来る?」の期待が武器。ただし弱いネタが1つ混ざると連鎖が切れる。強いネタだけで構成する
- 迷ったら短く。30秒程度に圧縮し、ダレる前にCTAへ送る。深い反応(保存・コメント・フォロー)こそが次の配信を連れてくる
748回という数字を、私たちは隠しません。伸びた回だけを並べて見せるのは簡単です。しかし、クライアントの成果を本気で積み上げるなら、伸びなかった一本にこそ次の設計図があります。入口で勝てていたこと、45秒地点に11%が残っていたこと、駐車場ネタで離脱が起きたこと——この解像度で敗因を特定できれば、次の一本は必ず強くなります。
株式会社NARERUは、成果も課題も数字で正直に読み、次の勝ち筋に変えていきます。KOWA飯田店の発信は、まだ続きます。